・子宮にできるがんは子宮の入り口(頸部)にできるがんと、子宮体部の子宮内膜にできる子宮体がんの2種類があります。
・子宮頸がんは20代後半から多くなり、40代以降は横ばいとなります。近年は20~30代の若い女性で増加しています。
・子宮体がんは40代から多くなり、50~60代で最も多くなります。
・日本では、毎年約10000人の女性が新たに子宮頸がんと診断され、約2800人が子宮頸がんによって亡くなっています。
・子宮頸がんの発症にはヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus:HPV)の感染が関与しています。HPVには子宮頸がんの原因になる可能性のある高リスク型と、皮膚や粘膜にできるイボの原因になる低リスク型があります。
・高リスク型の代表がHPV16型と18型で、子宮頸がんの原因の約65%を占めており、20~30代の子宮頸がんの80~90%の原因となります。
・低リスク型の代表がHPV6型と11型で、性器や肛門の周りにできる良性のイボ(尖圭コンジローマ)の原因となります。
・ワクチンは子宮頸がんの原因となるHPVの感染を予防しますが、すべての型のHPVを予防できるわけではありません。また、すでに感染したHPVについては効果がありません。よって、ワクチンと合わせて、定期的に検診を受けることが大切です。
・HPVワクチンは定期接種のワクチンで小学校6年生から高校1年生相当の女性は公費(無料)で接種することができます。
・定期接種のHPVワクチンには3種類ありますが、当院で接種可能なシルガード9(9価ワクチン)はHPV6、11、16、18、31、33、45、52、58型の感染を防ぐワクチンです。シルガード9に含まれる9つのHPV型により、日本人の子宮頸がんの原因となるHPV型の88.2%をカバーします。当院では定期接種と後述するキャッチアップ接種が可能です。
・シルガード9の十分な予防効果を得るためには、3回の接種が必要です。初回の2ヶ月後に2回目、初回の6ヶ月後に3回目を筋肉注射します。1回目にシルガード9を接種した場合は、2回目、3回目の接種もシルガード9を使用します。
・9歳以上、15歳未満の女性は初回接種から6~12か月の間隔を置いた合計2回の接種が可能となりました。
・すでに感染したHPVへの効果はないので、HPVに感染する可能性の低い10代前半に接種することで、効果的に予防することができます。
・頻度10%以上:注射部位の痛み・腫れ・赤み
・頻度1~10%未満:発熱、注射部位のかゆみ、出血、しこり、頭痛、悪心・頻度1%未満:手足の痛み、下痢、腹痛
・まれに過敏症反応(アナフィラキシー反応)、ギランバレー症候群(両足のまひ)、血小板減少性紫斑病(出血傾向)、急性散在性脳脊髄炎(まひ、知覚障害、運動障害など)などがあらわれることがあります。
・予防接種後に発生した健康被害に対して健康被害救済制度があります。
・HPVワクチン接種は2009年12月に緊急促進事業として開始され、2013年4月から定期接種となりましたが、相次ぐ副作用報告により数ヶ月で積極的勧奨差し控えとなりました。その後若年世代の子宮頸がんの増加、他国でのHPVワクチンの確かな効果、予防の重要性の再評価により、2022年4月より再度定期接種となりました。
・積極的勧奨差し控えの間に定期接種の対象であった平成9(1997)年度生まれから平成17(2005)年度生まれの女性に対しても公費で接種できるようにキャッチアップ接種が開始されました。
・期間は令和4(2022)年4月1日から令和27(2025)年3月31日までの3年間です。条件が緩和され、令和7年度内に少なくとも1回目を接種すると、2-3回目も公費対象となります。令和7年3月31日までに1回目を接種しましょう。
・接種後にめまいやふらつき、失神などが起こることがあります。接種後30分は安静にしていただき、経過観察を行います。注射や痛みに弱い方は寝た状態での接種や待機も可能です。
・他のワクチン後にシルガード9を接種する場合、先行ワクチンが生ワクチンの場合は27日以上あける必要があります。
・男性に対するワクチン接種は任意接種です。公費となれば、より子宮頸がんの減少に貢献すると思われます。今後に期待しましょう。